ここまでの説明で、放送局は放送する素材を作るだけであり、実際の送信は離れた場所にある送信所で行うことが理解できたと思う。送信所では、実際に送信を行う送信機が備わっている訳だが、その送信機の方式に幾つかの種類がある。

送信機において、放送局で制作したコンテンツは、電気的な交流波形として扱う。
送信機では、これをコンテンツが持つ最高周波数の概ね10倍以上の周波数を有する高周波に重畳させて、送りたい情報を載せ、送信アンテナから電波(電磁波)として送り出すのである。
送信機において、コンテンツのことを「変調信号」と呼ぶ。
また、高周波にコンテンツを載せることを「変調」と呼ぶ。
さらに、高周波自身を「搬送波」または「キャリア」と呼ぶ。
「変調信号」「変調」「搬送波(キャリア)」は良く出てくる用語なので、ここできちんと理解するようにしていただきたい。
上記の図で示した波形は、実際に受信機(ラジオ)にて受信するときにアンテナで現れる波形と思って差し支えない。
変調方式には、大きく分けて「振幅変調」「角度変調」「パルス変調」の3種類がある。
更にこれらを混合したものや、更に工夫を加えたもの、どれにも属さない新しい方式もあるが、ここでは「振幅変調」と「角度変調」について説明する。
■振幅変調 (Amplitude Modulation)
振幅変調は、中波ラジオで用いられる変調方式である。AMとも呼ばれる。
搬送波(キャリア)の振幅が変調信号に合わせて変化するため、この名前がついている。
中波ラジオだけではなく、短波ラジオや、ロシアや東ヨーロッパで行われている、長波放送(中波ラジオより低い周波数を用いる)でも使用されている。
1920年アメリカでラジオ放送が始まった時から使われている変調方式である。
受信機を単純な構造に出来る特徴を持つが、雷などの空電雑音の影響を受けやすい。
雷雲が近づいているときに、中波ラジオでは「ガリッ」「ガサッ」という音が入るのは振幅変調の弱点である。
■角度変調 (Angular Modulation)
「角度変調」という言葉は、おそらく一般には殆ど馴染みが無い言葉であろう。
これは、搬送波(キャリア)の周波数と位相が変調信号に合わせて変化するため、この名前になっている。
さて、角度変調には2種類ある。
変調信号に合わせて搬送波の位相を変えるものを「位相変調」(Phase Modulation)
変調信号に合わせて搬送波の周波数を変化させるものを「周波数変調」(Frequency Modulation)と呼ぶ。
位相変調の方は、一般的ではないが、周波数変調の方は、いわゆる「FM放送」として普及している。
コミュニティFM放送も周波数変調による放送である。
角度変調は振幅変調方式と異なり、空電雑音に強い、音質が良いという特徴がある。FM放送に音楽番組が多いのはそのためである。但し、受信機はどうしても複雑になりがちである。
さて、送信所には送信アンテナが付き物である。
実際の送信所は、こんな感じである:

左が中波ラジオの送信所、右が遠方から見た、テレビジョンとFM放送の送信アンテナ群である。 中波ラジオの送信所は、高さ50m 以上の鉄柱が必要なことから、多くの場合、平坦な場所で且つ周囲における建物がまばらな場所を選んで設置される。 また、テレビジョンやFM放送の送信アンテナは、それ自体はあまり大きくないものの、都市近郊のできるだけ高い山の山頂を選んで設置される。東京のように周囲に高い山が無い場所では、東京タワーのような巨大な電波塔を設置している。 東京タワーの設置目的は、世界に日本の技術を誇るためにあるのではなく、必要に迫られて建設された電波塔なのである。
